20代に80万円で芸術劇場に出られるとふっかけられた思い出に40才のしまっくが思うこと

   

どこの業界にも、裏話や都市伝説のような話があります。もちろん、エンターテイメント業界にも存在します。

枕営業、バックに暴力団体がいる、オーディションは金を積めば受かるとか。信じるかどうかは、アナタ次第ってやつですね。

27歳の頃だったように思います。自分の身にそれが降りかかりアナタ次第どころか、オレ次第な状態になったのは。

信じるしかないですよね。実際に恫喝されたりしたし。

2018年に入ってから、Twitterでフォローしてる方々がお金の未来について盛り上がってるんですよ。仮想通貨とかで。

話してる内容は面白くて明るい未来を想像するものです。そんなタイムライを見てたら、ふと自分のお金体験について思い返したんですよね。

今だからこそ笑える都市伝説的な話です。10年以上前の話なので、多少脚色あるかもしれません。

カッコつけたかったし箔をつけたかった焦りの20代後半は思考停止状態だった

27歳当時のオレは、とあるオーディション雑誌のプロダクション特集で見つけた芸能事務所に入り、指定された演技レッスン(よそのプロダクション俳優と合同)を受ける日々を送っていました。小さい事務所でしたが、入所時(※)には社長が挨拶してくれたし、特集記事に載ってるくらいだしとここで成功してやろうと情熱にあふれてました。
※入所としたのは、契約書を交わさなかったからです

所属当初は仕事は一切なく、ギャラ0のため派遣社員として夜勤のコールセンターで働いてなんとか生活費を稼ぐという生活。レッスンだって週3日、1回2時間で月3万円。これを高いと思うか安いと思うかは人それぞれですが、間違いなくオレにとっては高いものでした。

でもね、高いレッスンで演技が上手くなればオーディションの話だって回してもらえる、仕事され取れればレッスン代なんて回収できると必死こいてましたよ。

仕事さえ取れればというところが誰もがもがいてるところなのに、レッスン受ける=仕事とれるという頭の悪い思考停止状態でした。

餌がなくては走り続けられない競走馬と同じでレッスン継続も限界に

まぁ、現実はそんな簡単なわけもありません。オーディションの話も一切なくレッスンばかりの事務所に所属して1年になろうかとしたころです。

同時期に入ったヤツはどんどんとレッスンに顔を出さなくなり、音信不通になる事態。事務所に電話しても聞いたことのない声だったり。

「アレ?これなんか違くね?」

と思いつつもレッスンを受け続けていました。

競走馬じゃないけど、ギャランティ(仕事)という餌がないと走り続けられるものでもありません。電話でクレーム対応するのを上手くやるために演技レッスン受けてんじゃねーぞとストレスが溜まってきたころです。

演技レッスンの先生に相談したんですよね。

「同じように褒められてる人は仕事もらったり、先生のとこの舞台に出てますけど、自分はダメなんでしょうか?エキストラもダメなんですかね?」

と。そしたら

「出したくても事務所の意向とかがあるんだよね。まぁ角の立たないように事務所に聞いてみるよ」

と思いもかけない返事。だって、相当生意気な質問じゃないですか?キレられるの覚悟してましたから。

事務所からまさかの舞台出演とエキストラはNGという話

後日、事務所から電話があり、舞台に出てみないかという話でした。詳しい話は改めて事務所で、と。

電話を切って、天を仰ぎ演技レッスンの先生に感謝しましたね。TVドラマや映画ではなかったので若干物足りなさもありましたが、演技に飢えていたオレは事務所で話を聞ける日を楽しみにしてました。

約束の日です。事務所に行くとレッスンに残っていた僅かな同士2人が先に待っていました。期待半分不安半分の表情が、オレを見たことで安堵に変わったのを覚えています。きっとオレも同じ表情だったはず。

時間を少しすぎた頃にマネージャーと社長がやってきました。そして、一息ついてから社長がこう始めたのです。

「うちは芸能プロダクションだからエキストラはやっていない。役者とエキストラは全く違うしエキストラの案件は取り扱ってない。」

ここの事務所に入る前にエキストラ事務所に登録してたから分かっていたことなんですが、エキストラ案件の情報はエキストラ事務所に行くんですよね。制作の方できっちり分かれてるんです。エキストラを管理する人と、端役でも役名のあるキャストを管理する人が。

それを踏まえると、エキストラの話すらないのは理解できることでした

演技レッスンの先生に愚痴ったことへの気恥ずかしさが見抜かれたんじゃないかってタイミングで社長はまた口を開きました。

「かといって、芸歴がないお前たちを大きな現場に行かせられない。(演技レッスンの)先生が主宰の舞台で経験を積んだらどうだ?ちゃんと役をもらってステージに立つんだ。お前たちのクセも知ってるしよく分からない劇団に身を委ねるのも不安だろう?」

と。確かにな、、、と思っていたら矢継ぎ早に次の言葉が飛び込んできました。

「先生の次の公演は、池袋にある東京芸術劇場だ。小ホール(現シアターイーストorウエスト)だけど、キャパは300人だし、芸術劇場のステージに立つ機会なんてそうそうないことだぞ?」

なんというアメとムチ!!!映像はエキストラですらダメだけど、舞台なら芸術劇場!

仕事に飢えていたオレにはとても魅力的な話でした。

どこの世界も甘い話には罠がある

自分を含め3人(20代)が、40代の大人の話をここまで一言も聞き漏らさないよう固唾を呑んで聞いていました。

ここまで時間にして20分くらいでしょう。社長が話しだした内容を何度も脳内再生しました。時間にして3分位の沈黙だったでしょうか。

しびれを切らしたのか社長が一言。

「どうだ?やってみないか?」

返したのは、オレの隣にいた同士A。

「ギャラはどうなんですか?」

それだーーーー!!!

そんないいところでやるんなら、劇団として集客さえできればギャラだって端役でも出るはず!!!

5秒でペガサスファンタジー、いえ、幻想だって気付かされました。

「今回は、先生のステージに出させてもらうんだから、80万の出演料を用意する必要がある。ギャラはチケット1枚目からバックするから」

と社長の回答。

ふぁっ!?!?!?!?何言ってんだこいつ?

ウチュウジンカ?!

頭がフリーズしてるまま、社長の話は進みました。

「役をもらって芸術劇場に立てるなんて、高待遇だよ?世の中には100万出しても出たいって役者はゴマンといるから。そんなに貯金ない?ローン組めばいいじゃん。うちには信販会社のツテあるし、こんなチャンス逃したら損だよ?」

ゴマンもいねーよ!そんな金があればもっと大手事務所に裏金として渡して営業してもらうわ。しかも信販会社でローン組め?

あー、こりゃダメだ。あの先生もグルだったか。と落胆しつつも、思考は次の段階へ。ここでローンを組むわけにはいかねー。とりあえず帰って作戦練り直しだと。

「突然すぎて、どう応えていいか分かりません。レッスン料の支払いだってギリギリですし、今週いっぱい考えさせてください」

と返事しました。すぐ返してもらうことはできなかったけど、コールセンターの出勤時間だからと帰してもらいました。

派遣で働いてて良かったなと思えた初めての夜

とにかく帰ってこれたはいいものの、社長の話っぷりからすると明日には電話きそうだなと不安でいっぱいでした。

コールセンターでの夜勤も手につきませんでした。そんな様子を察したのか夜勤のリーダーが声をかけてくれました。オレと同じ俳優志望の先輩(以下、リーダー)でした。

リーダーはとある小劇団に所属しており、年に2回ほど下北沢や足立区の小劇場と呼ばれる劇場で公演に出ていました。

リーダーに芸術劇場の話をしたら

「芸術劇場に出られるのはすごいな~。でも、その出演料はボッタクリだよ」

と笑って返されました。

ですよね~。

とっとと事務所とも演技レッスンの先生とも音信不通になるのが手っ取り早かったのですが、中途半端に義理堅かった自分は、ローンの審査に落ちてそれで出演をダメにしてしまえばいいと結論付けました。

もうほんと馬鹿過ぎてグーパンですわ。

そんなバカにも奇跡というのはあるもので、コールセンターが消費者金融だったんです。そんなご都合主義ある?と思うかもしれないけど、これホント!

消費者金融のカードローンと信販会社のローンは厳密には違うものですが、ローンを取り扱うことには変わりなく、調べる機会はありました。

今ならネットに山ほど転がってる情報ですけど、審査に落ちる理由とかを見つけ出して、自分から積極的にその状況を生み出そうとしました。

1週間以内に結論出せと言われていた話も、なんだかんだで引き伸ばして1ヶ月粘ったんですよね。そして必死のリサーチのもと準備しました。

その甲斐あってローンは審査は見事落ちました。

それをキッカケに事務所を辞め、フリーランスの俳優へ

審査落ちしたにも関わらず、事務所に縛り付けようとされたわけですが、

「せっかくのチャンスを不意にした僕には、合わせる顔がありません」

と事務所を辞め、フリーランスの俳優となりました。

事務所に居た間も、仕事なかったわけだからフリーと変わらないかもしれませんね。いや、もっとひどいか。笑

レッスンだって、もっと格安でハイクオリティーのものを受けられると知ったのも、それからです。

フリーで活動するようになってからは、ローンを組まされそうになった時の必死のリサーチの経験がオーディション情報やワークショップ情報を精査するのに生きました。

もっと若い時分に、気付かされることなのかも知れませんけど。追い詰められないとオレはダメなくらいぬるま湯環境で生きていたんです。

もしくはちゃんと信頼できるパートナー(マネージャー)を見つける必要があると。

それから10年ほどかけて、今の環境を手にしました。

事務所と契約はしているものの、仕事を受けるかどうかは、僕に決定権があります。

マネージャーが見つけてきてくれた仕事以外の仕事を受けることも、先に決まっている案件とバッティングしない限り許されています。これは相互に信頼関係があるからこそです。

今だからできることは2つある

一つは、徹底的なリサーチです。

事務所にしろ、仕事にしろ、監督(プロデューサー)を名乗る人、ネットで調べれば情報が出てきます。いい話ばかりじゃないかもしれません。悪い話もあるでしょう。

でも、悪い話も、ネットに書き込んだヤツからすると悪い話かもしれないけど、あなたにとっては求めていたことかもしれません。もちろん、デマかもしれません。

一つの情報だけを鵜呑みにしないで、たくさんの情報からリサーチしてください。

とりあえず、やってみるというのも大事だけど、進みたい方向と真逆だって事前に分かることなら、やる必要なんてなくないですか?

もう一つは、自分からの発信です。

仕事がないなら、作ればいい。いい事務所が見つからないなら、声をかけてもらえないなら、声をかけてもらえるようになればいい。

俳優業に限ったことじゃないと思います。音楽の世界だって、お笑いの世界だって同じじゃないですか?

どっちの世界でだって似たような都市伝説的なことを聞くし。

僕が痛い目を見たほぼ20年前とは状況が違います。

あなたが、僕みたいに、無駄なお金と労力を使わないように。

最短距離で成功することを願います。

 - 業界あるある, フリーター